ミカの530EDは、言うまでもなく私レベルでは扱いきれません。
つまり、私には乗りにくいのです。と、言いますか上手く、速く走らせるのはレベルを超えていると言いますか?
けど、自在にこのパワーを操れるようになりたいと願いたくなるほど愉しいマシンなのもまた事実。
乗りにくいけど乗っていて愉しい。と、言う言い方というか、乗りにくいから愉しいともいえそうな?
余談
ミカのあの速さから一見ヤンチャに見えるライダーですが実に繊細なスロットル・コントロールが身上。
また、その時点ではミカはチャンピオンの実績がないがその速さから「未冠の帝王」と言われていました。
ミカ・アホラは低速重視のライダー。
当時は2T300を好んでいました。また、VORに移籍した際のVOR530EDファクトリー・マシンのセッテングは低速寄りでした。
余談
ジニはtmから独立しVORのファクトリー・マシンの製作も行っておりました。して、その工房と言うのがtm本社から10㎞だったのでよく訪ねました。
例えば当時のVORはデロルトからFCRに換装。また、tm時代はTDMRをFCRDに換装。実際、ミカにFCRに換装している理由を尋ねたところ「自分の乗り方に会っているのだよね。低速が大事だから」と、言っておりました。
余談
加速ポンプ付きキャブと言えばFCR(FCRD)が主流ですがtmはおなじ加速ポンプ付きでもTDMRを採用。
乱暴ですが両社の違いとしてFCRDはスロットル開度0からスロットル動作と同調して加速ポンプが働きますがTDMRは基本的にスロットル開度50%からスロットル動作と同調でした。
つまり、単純には低速域のツキ、トルク感が変わります。
TDMRは自然なスロットル・レスポンスでしたが、FCRDは兎に角ツキが良かったような記憶です。
高速域はTDMRそしてデロルトに分があったようです。フィーリングとか味わいは主観ながらデロルトですが。
ま、私の様なロートル・ライダーがワークス・マシン、しかも世界チャンプのマシンを乗り易いだと乗りにくい等言っても意味などありませんが。
余談
現在のワークス・マシンは逸品物製作(ダカール・マシンの様な)ではなく、市販車をそのライダーに合わせたマシン開発としている様です。
それとある国内メーカーのファクトリー・ライダー(マシン)の話
新型マシンの開発が終わり、最終開発テストで乗り終わってからのライダーの言葉が「とても乗りにくい、昨年型の方が遥かに良い」
それに対してメカニックが「でも、ラップ・タイムは昨年型よりとても速いんだよ」
それもちょっとの違いではなく相当早くなった様。
仕方なくライダーはタイムを落とさないようにマシンを自分に合わせるように変更していった。
これも実話です。メーカー名、ライダー名も公表できるならよいのですが。
ライダーのそれまでの経験を大きく超えた速度で走れてしまう。だから乗りにくいと感じる。の、かもしれませんね。
以上から「乗り易いというのはレーシング・マシンにとっては必ずしも誉め言葉にならない」という理由なのです。
何より乗りにくいがキチンとした出来の良い速いマシンはライダーを育てます。乗り易いマシンはその時のライダーのレベルにあっている。つまりそれ以上ない訳です。
tmは「愉しくて速い」。
中級レベルでもその良さは感じられます。しかし、乗り手の技量が高ければ高いほどどこまでも反応してくれる。その奥深さは例えようもない。
現在の技術の進化のなせる技でしょう。
また、繰り返すがライダーの経験、スキルで乗り易さ、評価は変わります。
ただ、経験から柔らかいサス、低速、中速のみのマシンが一般的に乗り易いと評価されるようです。また、コース、走る場所でも乗り易さは変化します。
試乗会などでのサスが固い、回せない、カブル!と、言ったネガティブな印象。
実際にそう感じられるのですから否定しませんが。
だれにでも乗れるようにする為と称しての手当て。
つまり、スプリングをソフトにしないと。
フロント・スプロケットを2Tくらい落とさないと。
シートを低くしないと。
等はそのマシンを知る事とは全く違います。
つまり、デ・チューンと言うわけです。また、だれでも単純に乗り易くするという事でしょう。それはtmにとって良いとは思えません。また、試乗の意味をなくします。