ワールド・チャンプの本気の走りは驚異的に速く美しかった。
速い、上手いのは言うまでもありませんが、特筆すべきはコース取りの正確さ。
毎ラップ、まったくラインが変わりません。数センチもずれていない程。また、ラップ・タイムもきれいにそろいます。
余談
ま、そうでなければマシンのテストや開発などできませんよね。走る度にラインがバラバラ、タイムも揃わない我々じゃ無理な話です。
それまでのテストから数種のセッテングの組み合わせまで絞れ、また、薄暗くなって他のライダーがすくなくなってきてからペースがさらに上がり本気を感じさせる走りに変わります。攻めているって言える走りでしょうね。
観察場所を変えて見てもやはり上手さ、速さ、迫力に驚き、美しさは何所で見ても同じ。また、同じコーナーでもセッテングが変わるたびに排気音も変化、また伸び、立ち上がり速度の違いにも気が付きます。
その日のテストの中での最終的な組み合わせが決まる頃にはすっかり日が落ちておりました。片づけを終え帰り道上のオート・グリルにて食事。
アレックスは日本でスーパー・クロス開催の時にも走っていました。
余談
私が見た時はヤマハで、マシンと共に真っ白ないでたちで走っていた姿はいまだに目に残るカッコよさでした。(後楽園だったか?神宮だったか?はわすれましたが)
ホンダ、ヤマハのファクトリーで走っていた関係で日本人はなじみもあるのでしょう。また、その為かテストの中のピットでも、また、食事の最中も私にも気を使ってくれます。
彼の英語はとても分かりやすく、また私の言葉も良く分かってくれ、外国人との食事の中で最も愉しいと言える時間を過ごせました。
また、彼は野菜ばかり食べていた印象が残っています。
その中、レーシング・マネージャーも含めてイタリア人らしくテスト内容を熱く議論を交わしていましたが、アレックスが好き(乗り易い?)なセッテングではタイムが伸びていない。反対に好きじゃない(乗りにくい)というセッテングのタイムが良い。また、安定している。
ただ奥が深いのがラインによっても変わる。
つまり、乗り易いからライン自由度が上がり実戦では武器になる。しかし、絶対的な速さは所謂アレックスの好きではないセッテングがタイムは出る。
乗り易いとライン自由度が増える。が、絶対的な速さにはつながらない。
チャンプを目指すなら安定してよいリザルトをという認識ですからね。
最終的に当たり前のようにコースによって変更と言う結論にその日はなったようです。まだテストは始まったばかりでデータ取集の段階ですから。
そう兎に角、今回でのコース、コンデションでタイムの出るセッテングは見つかっただけです。
今回の速いセッテングのマシンはアレックスには好きとは言えないマシンでした。
速いけど乗りにくいって事です。
そう、幾ら乗り易いとしてもタイムが出ないマシンはレーシング・マシンとして価値がないのです。だから「乗り易い=誉め言葉」にならないのです。
2000年初頭、たまたまtmに出かけた際、ミカが530のテストと言う事で同行した。
現在の250/300(2&4T)と同じく「ラム・エアー・インテーク・システム」を装備していたそのtm530ENの本社近くのコースにて開発テストです。
ミカの走行シーンよりも私自身がそのミカ用のマシンに乗って思った事です。
余談
ミカが、ドライブしてみるか?と、聞くので無謀にも乗ってみる事にしたのです。めったにないチャンスですから。
余談の余談
それ以前、世界選手権エンデューロのイタリア大会でチャンピオンを取った時のロマン・ミカリクのワークス・マシンにも乗ることが出来ました。その走破性の高さは異次元でした。
その530の印象は低速時の扱いやすい反面、スロットル・オープンと共に狂暴ともいえるパワーに翻弄されました。
しかし、低速での扱いやすさはこれまたびっくりするほどで滑りやすい路面でもタイヤ・パターンを残しながらもスムースに立ち上がります。そのままスロットルを絞ったとしてもそのジェントルなフィールは変わりません。
ただ、それはあくまでも絞るようにスロットル操作しての話。
急激なスロットル・オープンを味わうにはライダーにそれなりのスキルを要求するマシンなのは言うまでもありませんが。