There is no carburetor  (tm 125/144Fi インプレッション)

 

その昔、メルセデス・ベンツ300SLと言う車がありました。日本では石原裕次郎さんの車として有名であり小樽の裕次郎記念館にも展示されていましたのでご覧になられた方もおいでになるかと思います。

が、実はこの車、燃料噴射を実装した世界初の自動車として車好きに有名です。

その為、当時の映画にも300SLが登場。また、CG誌創刊号の表紙を飾った車としても日本でも有名。

その映画のシーンの中、オーナーが「キャブは無いのだよ」と、いうフレーズがありました。

そして今、tm2T125/144Fiに乗ってその言葉が頭の中をめぐっています。

余談

「キャブはないのだよ」と言うのは字幕です。実際、There is no carburetorと言ったかは定かではありません。

今や自動車はキャブがない(電子制御燃料噴射)のが当たり前。

バイクも4Tは排気量にかかわらずほぼすべて燃料噴射となり、絶滅が近いと言われる2Tも今や燃料噴射モデルとなってきました。

またtmはtmらしく2T125/144という小排気量レーシング・エンジンにtmは電子制御燃料噴射装置が世界に先駆けて実装。

そして今日本にやってきました。(トレールを除く)

その世界初の小排気量+電子制御燃料噴射装置2Tマシンに乗り終えて私は頭の中に「キャブは無いんだよ」と言う言葉が駆け巡った。

 

それは?

映画の中の「キャブは無いのだよ」という言葉には何か「自慢?」げな響きを感じます。

そう、自慢したくなる。と、言うのでしょうか?

それはキャブレターをしのぐ、いや少なくとも全く遜色ないパフォーマンスが見いだせる。

期待以上のパフォーマンス、フィーリングがあるからもうキャブである理由がない。

だから「キャブはないのだよ」と部分でしょう。

 

世界初の2T125/144レーシング・エンジン+電子制御燃料噴射は想像を超えて高い完成度を持っています。と、言うか他にありません。最も他にないから比べようもない。

性能もそうだが、まさしく比類なし!

 

つまり、tmは既にキャブだのFiのどちらが良いという議論など一笑するパフォーマンスとキャブレター仕様と何ら変わらない乗り手の意思に自然なフィーリングを、太いトルクと圧倒的なパワーを125/144Fiは実現しています。つまり、キャブ仕様と同じなのです。

 

tmですから当然と言えば当然です。しかし、小排気量には燃料噴射はとても難しい。まして小排気量2Tレーシング・エンジン。しかも完成の域に達しているキャブレター同等のパワー、トルクそしてフィールを持たせる難しさは想像できるでしょう。

そう、キャブレター仕様は既に完成され切っていますから。

そのキャブ仕様を超えなければならない宿命を持つのがtm-Fi。

まして名機と言う称号を思うままに手にしてきたtmだから更にその宿命は重い。

 

実は昨年中にというか21tm250Fiと一緒に試乗車としてやってくる予定でした。しかし、完成したのは3月でした。理由は完成度を上げるため。

 

レーシング・マシンとしてtmが考え、思うマシンにするための熟成期間が予定より必要だった結果入荷がおくれたのですが今彼らが満足できるマシンが出来たのも今回の試乗テストにて確認できました。

確かに、今までキャブのtm125エンジンに心酔している者にとってFiは如何よ?と言う心配は全くないと言えばうそになる。

しかし、試乗を終えた今その杞憂は風と共に後方に流れさりました。

 

貴方が試乗する機会があっても事前に知らせられなければFiとは分からないままに試乗が終わると思われます。

そしてキャブとFiの違いというより125/144という排気量が信じられないtmのトルクとパフォーマンスに感動されるでしょう。

 

冷間時、暖機後、転倒後の始動性のすばらしさ、機関の安定性。

リニアでパンチにみちたピック・アップ。

tmならではの高回転の伸び。なにより小排気量でありながらトルキー、力強いと表現できる回転フィール。

そうキャブレター仕様と何ら変わらない。それどころかピック・アップとトルク感はキャブレター仕様をしのいでいる。

少なくとも体感では。

ましく「キャブじゃなくとも良いのだよ。」と、言い換える事ができます。

 

試乗マシン&セット・アップの紹介

125は100%スタンダードとしオプションは装備しておりません。

144は外装white、後輪リヤのリムを2.15のワイド仕様。

 

入荷後(弊社変更)

クラッチ・レバーは不本意ながらも折れないという社外レバーに交換。

ハンド・ガード装備

余談

通常、社外品など間違っても使用しません!特に操作系は。

クラッチは試乗車なので仕方なく、です。

 

エンジン・オイル  バーダルKTS(純正指定)、

ギャー・オイル   ベルレイ ギャー・セイバー80W

ガソリン      ハイ・オクタン(シェル)

 

ハンドル・ポジション0。(tmのハンドルバーのメモリ上)

フォーク突き出し 標準

ダンパー・セッテング

フロント 標準から圧、伸び共に標準。

リヤ   圧は標準、伸びをプラス2クリック。

スプリングはそのまま。

タイヤ空気圧、フロント0.9psi  リヤ0.8psi 

 

始動性

全く、自然。キャブレター・タイプと全く同じ感覚です。

今の北海道の朝一始動はチョーク(スターター・ノブ)を引いてキック一発。再始動もキャブレターと同じ感覚で時にアクセルを開ける場面もあるがほとんどキック一発で始動です。

当然125/144共に常にキック一発。

今回の試乗最中では全く違和感などない。キャブと同じフィーリングで始動可能。転倒後は試すことはできませんでしたが、一端バイクを倒してみてからの再始動もキャブ仕様と同じ。

始動性能に関してはキャブ式と全く同じ感覚。ほぼキック一発始動。まして125/144共にとても軽い作動です。

排気音

144の排気音の太さは小排気量であることを忘れさせる。

野太く迫力すら感じ、また、その音はトルクの太さを想像させる。

125とて125と言われなければ同じく力強く迫力に満ちているが144と違い高周波音つまり金属音が混ざります。これがまた快音と言うか良い響きを聞かせてくれ、どちらにしても「良い音」です。

 

125

流石にtm!

最高って、思わず叫びだしたくなるほど「愉しいマシン」

愉しいのはtmだから当たり前と分かっていても特筆すべきと言うのが最初の印象。

特に何所でも思うように走破そして走れますが特にコーナーの速さ、愉しさは痛快以外何物でもありません。また、言い方を変えるなら「俺、上手くなったんじゃない!」と思いながら駆けめぐっていました。

 

兎に角、ブレーキングからコーナー・ワークの一連の流れがリズムに乗って小気味よく決まります。それがとにかく面白い。

乗り手の思うように縦横無尽に走れるというのはとてつもなく愉しい事です。

しかもシャーシが常に速いtmですから常に乗り手に余力を与えてくれる。

また、前日までの雨で時折現れる水たまりをかわすシーンでも、フロント・アップでかわすも思うまま。

轍も同じ、いとも簡単に轍が有ってもなくとも安心して走破出来てしまうのですから、愉しくないわけはない。

 

また、元々市販車ナンバー1ブレーキ・システムの素晴らしさも車体の軽さも手伝い一段と引き立っている。

下りの全開からのブレーキングなど後ろ髪を思い切り牽かれるが如く気持ちよくシャープであり乗り手の意思に忠実。

思うように速度を落とし、コントロールできるブレーキを持っているというのはそれこそ速さの証明となっている。

だからブレーキングからコーナーに入る流れがとても小気味よくも痛快に決まるのです。

 

さて、冷静になって対話するように走ります。

21の125/144にはtm恒例のマップ切り替えスイッチが廃止されました。

tm信者はきっと切り替え(低速、高速)など必要なくなったからだ。と、思うでしょう。

で、乗ってみて予想は的中。

 

同行された方(07tm125のオーナー)の乗り終わった最初の一言は下がすごいね。と、

でした。

しいて言うならトルクの粒が大きく、厚みが増したと表現できるのがFiの125。

まして出来上がったばかりのtmレーシング・ユニットは例外なく緻密にかっちりと組み上げていますから重厚と言えるような綿密な回転フィールもあります。

つまり、トルキー。

勿論、Fiに限らずキャブレター・タイプも125としてはトルキーと表現されたそのままです。

よってマップ切り替えが廃止された。と、解釈できます。

 

ですから回さなくとも走れます。しかも愉しく。

キャブ仕様は回して走るようにマシンにせかされる感覚もありましたが最近の特に20からかけてそしてFiはトルクが太い為か普通にパワー・バンドに入れなくとも普通というか何気に走れてしまう。

勿論、パワー・バンドに入ればそのパワーに酔いしれ強烈な加速、速さに身をゆだねる事が出来ますが、それ以下、速めのシフト・アップでちょっと速めの林道ツーリングも愉しい。って、感じです。

今回の試乗(山の中)では慣らしと言う事もあって全開走行はできませんでしたがマシンとしてのポテンシャルの高さは充分に伝わります。

時折50%程開けましたが、ほとんど30%未満のスロットル開度で十分楽しめる。

 

最新鋭tm125というエンジン+最新鋭tmシャーシの組み合わせに死角は何所にも見つかりません。

マシンの安定感、鈍感な挙動がもたらす安心感はひたすらライディングに酔う事を教えてくれるでしょう。

この愉しさ最高!

それ以上でもそれ以下もない。

最新鋭のtm125という世界最高峰のエンデューロ・マシンの持つtm125のエンジンの高い評価は不動だという事を改めて知りました。

 

ちなみに125/144共にシフト・ポジション・センサー(S.P.S)が250/300同様に装備されました。これによってより細かくパワー・バルヴ制御を可能にしました。結果得られる緻密で広いトルクとトラクション・コントロール効果によってより高いトラクションを可能にしております。

125/144 とも大きなトルクを生み出すための新TMEES効果は計り知れません。

 

144

マップ1が最高に愉しいのが144。

と、言って居られた方がおいでになる事を思い出しました。

 

さて、125と比べるなら最初は随分印象が違います。また、先の方が言って居られたマップ装備時代のエンジンとは趣が変わった感じを受けます。

例えて言うなら125に増して更にトルキーで250チック。もしくは従来のマップ2で走っている?いや、マップ2ならこれほど高回転は回らない。

マップ2のトルクとマップ1の高回転を兼ね備えているというならそれが正しいかも。

 

まずはエンジン

明らかに以前の144は125の延長線上って言えました。しかし、この144Fiのエンジンはさらに排気量が大きく感じます。より「250に近い」感覚と言った方が正解でしょうか?

 

125の曲線を描いて回転が立ち上がるまさしく小排気量2Tレーシング・エンジンですが、144はフラットで厚みあるトルクを全域で感じさせてくれる。

して、それじゃ回らないのか?と言うのはtmエンジンを知らない方の言葉。

Fi化によるトルク・アップ+tm高回転パワーは新エンジンともいえる力感を実現。

単純にボアアップしただけのエンジンとは生まれも育ちも違うっていう事がお分かりだと思う。

 

更に距離を重ねてくるうちに徐々に固さがほぐれてきました。また、125と共に軽快になってきました。

それでも144Fiはキャブレター仕様と比較してさらに排気量が増えた印象です。144が160くらいになったようなトルク感を感じます。

当然125より明確に楽が出来る。シフトの回数は大幅に少ないのが144って感じです。

更に250のように回さなくとも速い。

 

ご注意

実はFi化され一番変わったのがスロットル開度(アクセル開度)。

今までのキャブ仕様のスロットル開度から比べると同じスロットル開度でも10~15%位余分にスロットル・バルブが開きます。

つまり、ハイ・スロットルとなっていますので僅かな開度でもアクセル開けすぎ状態に陥ります。

それが感覚的にピーキーに感じる原因。

多く見られるのがアクセルの開け好き+スパッと開けてだらだら戻す。

こういったスロットル・ワークではマシンの本質など分かりません。

丁寧なスロットル・ワークを意識してみてください。

ユックリ開けてスパット戻すのが基本。

もし、当方の印象と違うと思われる場合、今一度ユックリとしたスロットル・ワークでお乗りください。今迄のインプレが納得できるかと思います。

 

さて、特筆すべきこと。(余談かも)

先にも言ったように125のコーナーの速さ、愉しさ、軽快さはFucking fun!ですが、太く大きなリヤ・タイヤを持つ144は標準タイヤの125から直接乗り換えるとプッシュ・アンダーからフロントの接地感が心もとない、逃げるような印象となる。つまり、軽快さをあまり感じません。また、コーナーを125程速く上手く回れない。

同じシャーシを持ちながらこれほど違うとは!初体験です。

 

尚、パワー的には125とて140を選んでも不足は出ません。そう、履きこなせるのはtmだから。

ちなみに2T124/144  4T250はOPでワイドリム+140タイヤが用意されます。

 

走り込み、距離が増え、路面状況が変わるにつれてその理由が明確になりました。

125に比べて回転マスは僅か19ccと言っても大きくなります。回転マスの大小はフィーリング、操縦安定性に影響があります。

それより大きな要因として今回125のリヤ・タイヤは標準の120サイズですが、144はワイドリムに140サイズですから外形の大きさから実質ロングに、また太さもそうですし扁平率から形状も変わってます。

 

考えてみれば今迄125も144(含む4T250)もtmの場合、盲目的にワイドリムに140サイズを選んでいましたが、林道なら120サイズの方が遥かに軽快で愉しいって事が今回で判りました。

また、反面直接乗り換えて初めてわかる部分として濡れて滑りやすいところは140がその本領発揮っていうのもまた事実。

ただ、120がトラクションしないのでありません。

画像の 左が120サイズ。右が140サイズ。

 

ジャ、タイヤはどうする?

と、言うなら、細目のリムには140は厳しいが、太目のリムに細いタイヤの問題はありません。タイヤは消耗品ですから最初に太めリムを選んでおけばサイズで選ぶ幅がでます。

ただ、おなじ車体でもタイヤ・サイズでこれほど操縦性能が違うっていうのは新たな発見でした。

 

近いうちに144に120タイヤをはかせて試してみます。

たま、140なりのジオメトリー&サス・セッテングを行えばそれなりになるとは思います。

 

サスペンション

70~80㎏くらいのライダーであれば全くスタンダード状態のままで不安も不満もなく楽しめる。新車時から良く動きますが60㎞程走行後は味わい深くしなやかで心地よい。

KYB+tmショックの組み合わせも絶妙で完成の域。そう世界のトップライダーがのり世界選手権で勝てる足回りですから。

 

19以前まではショック吸収性、作動性に文句はないがヨーロッパのマルゾッキ、パイオリ、オーリンスと言った人間の五感に響くような味わいを持つユニットから比較すると物足りない部分もありましたが現在のtmフレーム、tmショックとの組み合わせはKYBも中々です。

まして性能的には現在の一級品です。北海道のレース、林道主体のエンデューロ・シーンでは標準のままで何の不満も問題も見いだせない。

 

ま、コース走行主体、モトクロス・コースでは不満が出るかもしれません。

そう、オーナーそれぞれのセッテングと言うか、セット・アップは必要です。

 

で、125か?144?

乗り比べられますので是非試乗にお越しください。

また、キャブか?Fi?

キャブの方が少々お安い。構造、構成部品も少ないから多少軽い。つまり、よりレース向き。とは言えます。

但し、「愉しみ」ともいえるがキャブ・セッテングは不可欠。そして、直接乗り比べるならそのわずかな差が見えるかもしれません。共に優劣ではなく、どちらが好み?でしょう。

 

Fiは使いやすく、お手軽に高性能が味わえる。燃費もキャブより良い。

でも、どちらもtm Racing のエンデューロ・レーシング・マシン。

つまり、市販車最高峰。

そのままで何も引かず、何も足さずに比類なき高性能と安全性を享受できる幸せはどちらも満載。

 

但し、tmの、いいえマシンの本質を見失いますのでくれぐれも開けすぎご注意!

 

最後に。

今回、新車からシェイク・ダウンとして約40㎞(山の中、比較的フラットですが轍あり)。雑誌試乗で20㎞程(ジャンプ、ギャップ)の都合60㎞程走行後、いつものテスト・コースに125/144共に連れ出し、共に一往復全開で走ってみました。

エンジンは当初の重厚とも例えられるような重さ、固さは共にすっかりなくなっており従来のtmらしい軽快でシルキーな回転上昇、小気味よい高回転の切れを味わう事が出来ました。それは全くキャブレター仕様と遜色ない。と、自信を持って言えます。やはり僅かな試乗時間では本質など分かるはずもありません。

 

125Fi/1447Fi共にtmらしく素晴らしいエンデューロ・レーシング・マシンです。