tmは伝統的な世界選手権エンデューロGPの為に生まれたマシン。
つまり、エンデューロ・レーシング・マシンですからレース時における強さというか性能の高さは言うまでもありません。
ですからダート・レース・オンリーという単一目的のマシンとしてダート走行の愉しさ、安全性は別格中の別格。
また、現在のtmはハード・エンデューロにも対応&勝てるポテンシャルを持つ進化型ともいえるマシン。
特に2T300の低速、粘りと言った力強さと安定感は桁外れ。
しかし、幾ら素晴らしいポテンシャルを持っているマシンでもメンテンス、ライダーに合わせたセッテングは必要不可欠。
また、それなしには折角のtmも、勿論ライダーも可哀そう。
さて大昔、外車は「壊れて大変!」とか「壊れるし、部品がない」更に「部品が高い」というありがたくない話ばかりでした。
と、言いますかそういうイメージだったのでしょう。
事実、36年前に自身初めて外車オーナーとなった時、その洗礼というか?
性能、乗り味は素晴らしいが「壊れる」「まともに走らない」と実際に頭を抱えました。
兎に角、カブル。
幾らキャブを掃除しても一本1400円のプラグが一日で3~5本くらいカブルからプラグ代だけでも大変。
何度か購入先ショップに相談するも「乗り方が悪いの一点張り」。
仕方なく輸入元に聞いてもキャブ・セッテングと言う話。
そんなやり取りの中500㎞ほど走ったら「焼き付き!」
勿論、新車です。しかもその間一月ほど。
カブルし焼き付く!
って、如何したらよいのか?
しかも、他にも目の前でオーバー・クールでの焼き付を目撃したり。
ですから外車=壊れると言われても仕方がない。
何より再スタート後にカブル。
つまり、冷えるとカブルから一休みもできない。
これじゃ、スタート前にお湯をラジエターに入れなきゃなんないのか!?
と、冷却水の温度にはすごく気を使いました。
レーサーなのにレースに出られない!って、と、本気で悩んだ。
結果
プラグのカブリは最終的にエアー・スクリューの緩み止めスプリングの錆。
余談
そこは当然、バンドがバカになる程に何度もキャブを掃除していますが、スプリング全体に錆が次から次に発生し、エアー通路をふさぐのが原因。
若しかしてスプリングか?と、試しに取り換えたら完治!
でも部品がないのでボール・ポイント・ペンのRスプリングを切って代用。
そのあまりの単純さに腹が立つやら、あきれるやら。
つまり、外車ってこんなもの!
その他、当時のマシンのパットは雨だと一日持たない。
ウォーター・ポンプはレース前にはOHが必須。
スイング・アームがサブ・フレームに干渉して削れる。
速度計は走行毎にギャー・ボックスが壊れる!etc。
ヘッドはレース毎に増し締め等々が当たり前。
余談
レバーは鍛造で折れません。って、言ったって転倒する前にまともに走らないじゃん!って、悪態も付きたくなりました。
ま、当時の4輪欧州車でも壊れるというか手間が国産の比ではありませんでした。まして欧州製バイクは日本の品質管理から見たらお粗末でした。
但し、自動車同様に乗り味、性能という部分は一端欧州車に乗るとその素晴らしさに感動し惚れこむのも又事実。
つまり、性能には満足するが、カブリも含めて頻繁なトラブルにまともに走らない確率も高かった。ただ、事前に対処すれば・・と言う部分もありますので人災ともいえる場合もある。
ま、常識違いと言えばそれまで。
そんな手間暇のかかった最初の外車エンデューロ・マシンのおかげで随分、外車に対して免疫というか勉強もでき、何よりレースに対する心構えも同時に教えられました。
余談
当初tmはイタリア製と言う事からもっとトラブルがあると、ある意味覚悟したが全くの杞憂でそれまで乗っていた外車から比較したらtmは全くのトラブル・フリーと言える。
外車にかかわらず、レースを愉しむには。
レース前にタイヤ交換を含めての点検整備は欠かせない。
タイヤ交換の際にはハブ・ベアリング、リンク、ステアリング・ヘッド、スポークも点検、注油等ができます。
また、タイヤを新しくする際には必ずチューブ交換はセオリー。
空気圧はきちんと耳を上げる為と維持のために高めに注入。
ブレーキ、クラッチ・フルード交換、ワイヤー類の注油、取り廻し点検。
ブレーキ・パット交換(当時の物)
エンジンはギャー・オイル交換、冷却水点検、ホース点検、リード・バルブ点検、エアー・フィルター清掃、交換。
エンジン始動してWP、クラッチなどからの異音確認、最終的に外装取り付け確認後走行テスト。
余談
それと電装品の作動確認。
この部分、流石に今は良くなりましたが、外車のそれは最初から壊れていると思う程に弱くて走行するたびにどこか壊れていました。大体レースに出るに電装品に一番手間がかかった。と言っても過言じゃないでしょ。
スタート前
パルク・フェルメにてプラグ交換、空気圧調整。
勿論、燃料とオイルはフレッシュな物を使用するのは当たり前。
以上、今も皆さん当たり前かと思いますが、以上の点検で国内の2日間程度であればレース中トラブル・フリーでした。
また、インカ・ラリー、アジア・エンデューロでも同じく途中、タイヤ交換、フィルター交換だけでマシン・トラブルは皆無でした。
勿論、人間の能力、トラブルは別ですが。
メンテナンス=トラブル回避
つまり、洗車も含めてマシンに触る事が事前にトラブル解消につながる。
プラグを交換すればキャブ・セッテングの状態も分かる。また、付随するキャップの状態も確認できる。
リード・バルブを点検したらキャブを外しますからキャブをOHできます。おまけに取り付けバンドの状態も分かればワイヤーの取り回しも分かる。
冷却水やギャー・オイルを点検、交換すればWPシールの状態も分かる。
足回りも同じです。
大体一か所の点検で複数の部位を確認できます。勿論、新車でも同じ。
Raceは何が起こっても自己責任。
例え踏まれても、ぶつけられてもレーシング・アクシデントであり例え相手がいたとしても自己責任であり文句は言えない。
後日SNSで自分の都合の良い部分だけをアップ、匿名で主催者、参加者にクレームを付ける。
まして損害賠償などとんでもない話。
このような方はレース参加はやめた方が良い。と、いうか参加する資格がない。
だからライセンスと言う話にもなるが、お金さえ払えば、講習もなく誰にでも与えるライセンスなど誰かの金もうけでしかない。だから、レース自体の質も上がらない。今のライセンスなどまったく意味を持たない。
マシンも同じ。
レース使用は極限状態。
マシンに対する負荷は公道走行の100倍以上。マシンにいかなることが起きたとしてもライダーの責任。整備なしでは当たり前にトラブルが発生します。
余談
ただ、同じコースを走っても不思議な事にライダーレベルが上がれば上がる程トラブルも少なく、マシンも壊れない、壊さないのですが。
いくら遊びのレースでも危険は付きまとう。
でも前の夜、酒を飲んで騒ぐ。折角のレースなのに整備、点検もしていない。タイヤは減ったまま?
レース中も同じ、煽り運転さながらで怒鳴る。転倒は仕方がないが動けない程の怪我もしていないにもかかわらずコース上にマシン放置。また、同じくバッテリーが上がった程度でもコース上マシンを放置等々はマナー違反以前の問題。
マシンとライダーのポテンシャルの合計を10としますと大体ライダーが7~8以上で残りの2~3がマシンでありマシンの状態でしょう。
腕や体力の差は簡単に埋まりませんが、良いマシン、良い整備を行えば差は少しでも縮められる。
つまり、腕が同じ+整備もしていない。性能も良くないマシンに乗ればライダーの能力すらスポイルしますから7未満。
でも、きちんと整備された良いマシンに乗れば8にでも9にでもなる。加えて腕の差があれば大きな違いになる。
ただ、不思議な事に上手い、速いライダーの大体の方がマシンを良い状態に仕上がっている。
半面、そうでもない方の場合、マシンに対してあまり思い入れ、手入れが見えないのも多いのもまた事実。
レースに対する思い入れの違いでしょうか?
我々のレースは所詮遊び、山遊びも遊び。
昔からよく言いますね。
愉しい遊びもきちんと遊べないとつらい仕事はできません。ってね。