先の与太話は意外にも反響をいただきました。特に頂いたのは“若いが老害を感じさせる人も多い”と、言う意見。
相手に恥をかかせない。のが、日本人だったと思いますが、今は老害に限らず論破するのが偉いといった風潮です。ま、こういう話は微妙なので、この辺に。
さて、アルミ・フレームについてtmの考え方というか開発のお話。
ホンダが世界に先駆けて採用したのは皆さんもご存知でしょう。では何故、アルミ・フレームなのか?
ホンダさんと言うなら4Tエンジン。して環境排気ガス問題から4Tに移り変わりを見せてきました。
つまり、それは世界的にも2Tから4Tに移行する過渡期でした。
ただ一般的に見て4Tはヘッド部が重い。
も、含め車体重量が重いのは周知の事実。つまり、マシン全体を軽くするにはアルミ・フレームは必然の流れ。同時に相対的に重心、マス集中も、同じ剛性を出すなら鉄より軽いアルミの方が有利。
と、おおざっぱながら。
勿論、言うほど簡単ではありませんが・・・。
更に4Tエンジンと言うのは2回転に1回爆発です。
しかも2Tと比較してはるかに圧縮も高く、燃焼効率も高い。その為にパルス感というかトンと押し出す感覚は2Tより強い。その反発力をトラクションに変える。もしくは生かすには反発の強いアルミは鉄より有利。単純にアルミの方が前に出る。
例えばアルミと鉄の塊を並べ、それぞれにハンマーを振り落とす。もしくは鉄球なりを落とすと跳ね返りははるかにアルミの方が大きいのはお分かりかと思います。
つまり、反発力が強い。また、4Tエンジンも同じく押し出しが強い。つまり、前に進む効率が高い。アルミ・フレームは4Tの為のフレームと言ってもよいのかもしれません。
ただ、2であれ4Tであれ基本的にtmにとっては“速いか遅いか?”のどちらかです。
つまり、同じライダー、同じエンジン、同じコース、同じ使用ならアルミと鉄のどちらが速く走れるか?
速い方を採用するという、いたって単純な話で、それがtm racingという社名を使用している理由。
以前にもお知らせしましたが、菅生にてtmが世界選手権を走った際、やってきたレーシング・マネージャーが“ハジメ、もうじきアルミ・フレームになるよ。今より2秒速くなる!”と、嬉しそうに話をしておりました。
そう、速くなる。
なによりtmにとって最も大事な価値です。
しかし、反発が強いのがアルミ・フレームの長所でもあり、またウィーク・ポイントにもなりうる。
そう、“反発が強い”というのはリバウンドが強いわけです。
tmはサスペンション・ユニットを自社開発。
tmのフレームに合う、思うようなサスペンション・ユニットが入手できない。
ならば“自ら作る”って、いうのがtm。
して、毎年変わるフレームに合わせてサスペンションもモデファイされています。特に19のtmショックは乗った瞬間に18とは明確に違うと分かります。
更にフォーク。
tmは以前からのヨーロピアン・フォーク、例えばマルゾッキなどの採用をやめてKYBを採用。
理由は速いから。
また、tmのアルミ・フレームに合う、tmの考える操縦安定性を保証するフォークが日本製以外他にない。と、いたってシンプルな理由。
外車でアルミ・フレームを持つのはtmだけ。
だからtmは日本製KYBを、更にtm用にアレンジして採用。勿論、毎年変更されるフレームに合わせて。
そのサスペンションを助けるべくtmは毎年のようにフレーム自体のモデファイ。レイク角と言ったジオメトリー変更、ホィール・ベースを毎年のようにモデファイしてきています。
tmは速いアルミ・フレームを開発、採用する。
しかし、そのリバウンドを抑える。もしくはアルミ・フレームの良い部分を引き出す為に自社開発。その為のコスト・アップは仕方がない。
ですからtmのアルミ・フレームにはtm社の明確な意思がある。ただの流行りだけはない。
ちゃんとしたアルミは鉄より速い。
でもその特性であるリバウンドを封じ込める為の開発ができる、する。
言い方を変えるとそのくらいの覚悟がないとアルミ・フレームは難しいのでしょう。
余談
ENやCCでは2TにはTTXをOPで準備されますが、4Tにはありません。
また、ターマック走行とオフ走行の違い、また、スリック・タイヤを使用するモタードは4TにもTTXは選べます。
今までの話からその理由がお分かりかと思います。
また、tm shockの優秀性を物語っています。
そんなtm、知れば知るほどtmの“走り、速さに関するこだわり”に驚愕を覚えます。
ちなみに現在ジェリーズさんで納車整備中の4TCC250のフレームの姿です。
単純に美しい!
この造形美だけでも価値があるでしょう。

