過渡期

時代はエンデューロ・レーシングからインジェクション+分離給油そしてセル装備というトレール化ともいえる方向に向かう過渡期の真っただ中です。
勿論、tmのように純レーシング・マシンを製造している処もある。

ただ、今のマシンはあたかも従来マシンと呼べるモーターサイクルから普通というか登録ができる競技も出来る公道走行用バイクに移行にも映る。
ただ、最初はトレールバイクだけでエンデューロマシンが少なかった日本のエンデューロが始まったと思うと、大袈裟ながら時代を逆行しているかの様です。しかし、これも過渡期というか流れです。良き時代を過ごして来たのは幸せに思いましょう。

 

ただ、バイクに限らず車もそうだが過渡期には良い機械が少ない事は歴史を見ればわかります。そんな時代に失敗しないマシン選びになれば幸いである。

そう“失敗しないライダーX”になる為に。

 

どうしてそうなるのか?
現在、エンデューロ発祥のヨーロッパでの二輪車における排気ガス規制は“ユーロ4”。
この規制下の元、早い話、HC垂れ流し状態のキャブ仕様2Tでは規制がクリアできない。
つまり、インジェクション化が必須。
まして2Tはチャンバーが生み出す排気脈動は充填効率を稼ぐ一方未燃焼ガスが多く排出される反面があります。ですからスロットルオフ時の燃料を完全にシャットアウトできるインジェクションは不可欠になります。
*HCとはHydro Carbonの略で炭化水素の事。ま、乱暴ですが石油(未燃焼ガス)その物?を言います。詳しくはお調べください。

 

加えてオイルを燃料と一緒に燃やす混合燃料ではインジェクション化はまずい。と、言うかできない。
それはHCの減少に良いがスロットルオフの状態ではオイル(混合燃料)も遮断となるから。
つまり、その状態では従来の混合のままでは潤滑が出来ない事を意味する。
余談
スロットルオフ=オイル供給0=即壊れる。と、ならないでしょうが寿命は著しく低下するのはお分かりかと思います。
現実に分離給油になったエンデューロバイクをそれなりに使用するとクランクサイドベアリングは1年ほど、もしくはそれ以下で異音発生から交換という実例もある。

 

また、混合燃料のようにアイドル時から全開時まで同じ量のオイルを燃やすと全開時は別にしても規制速度域では燃焼温度も上がらずに完全燃焼は難しくNOX対策にもつらい。
また、燃えたオイル(排気煙)から受ける汚い感覚はぬぐえません。
*NOXとはNitrogen Oxidesの略で窒素酸化物。詳しくはお調べください。
 燃焼温度の低い2TではHCと並びんで厄介な物。

 

また、CO2排出量も同じく“濃い混合気”ではユーロ4は達成できません。まして2Tの場合、CO2を減らすために単純に薄くすると焼き付きという損傷がありますから最適な機関運転を実現するにはコンピューター、各部センサーによって燃料と空気を管理できるインジェクションと確実な潤滑の為の分離給油が不可欠になる。
ただ環境に配慮すると当然、十分な燃料もオイルも供給できませんから従来レーサーの様な大きなパワーはありません。

*CO2 HC NOXなどの排気ガスの成分に対してその排出量を規制しているのが排気ガス規制。但し、規制は市街地走行時の量。詳しくは後述。

 

そしてセル。
どうして昔から4Tにはセルが付いているが2Tには今まで装備されなかったのか?
大きな要因は始動性の問題。
2Tは、特にtmのように現在のレーシングエンジンは始動性はとても素晴らしい。ホボ、キック一発です。
しかし、4Tは如何でしょう?
冷間時、オーバーヒート時、不意、エンストに対してというか、ホボすべての状況下において2Tほどにはキックによる始動性は良くありません。
特にバルブオーバーラップの大きなレーシングエンジンの始動性は決して良くありません。

て、言いますかはっきり言って悪い。
結果、4T+セルというのは“当たり前化”してきました。

 

同じく今の2Tのセルです。
先の排気ガス規制に対応する“薄いセッテング”では始動性に不満が出る。従来のキック一発始動が難しい故にセルフスターターが必要。


加えてというか、偶然というか?ハード系エンデューロが最近盛んになってきましていくら足の長さに問題のないヨーロピアン達とて難所で何度も転倒、エンストを繰り返すとキックはつらくなります。まして250クラスはキックもそれなりの抵抗というか、固さです。
結果、セルが重宝されるわけです。また、先進国の高齢化も一因でしょう。

 

話しは少し戻りますがハード系エンデューロであれば従来程のパワーは必要なくなります。っていうか無くともハード系であればOK?。
また、パワーが無いなら速度も出ません。つまり、車体も従来ほどの強度、剛性も必要なくなります。
250というキャパシティーがあればいくらパワーが無いと言ってもトルクはそれなりですからハード系エンデューロには不足はあまり感じないでしょう。


更にパワーが無いと、潤滑オイルも少なくて済みますから分離給油化には都合はよい訳です。

まるで環境問題から変化するバイク規制に合わせてレース状況まで変わっていくようです。
つまり、環境問題に加えて現在エンデューロレースの低速化?というか難所、走破を目的としたイベントが主流となってきたのが重なり合ってエンデューロバイクが変化してきた。とすべてではありませんが現在のバイクに乗って感じました。

 

しかし、それが世界の、本場の流れだからと言って文化、伝統あるGP。つまり、グランプリレースを蔑ろにこのままならとても悲しい。
余談
昔、I.S.D.E.(International 6 days Enduro)はI.S.D.T.(International 6 days trial)という名称から変化してきました。良く言うとなんか今はそういう方向なのかもしれません。歴史は繰り返す?

 

また、GPというレースシーンだけ見ると退化という進化をしているのですから現在のエンデューロバイクはトレール化していると言われるのでしょう。
昔のトレールとエンデューロマシン程の差はないでしょうがパワーのなさ、耐久性の無さを見るとそう例えられても仕方がありません。
ちなみに耐久性というか分離給油バイクは先にも述べましたが高負荷のレース時などオイル供給量が足りない故にクランクベアリングの寿命が短い。と、その実例が報告されています。

 

今はエンデューロマシンの過渡期として避けられない時代の流れですが果たしてこの後はどうなるでしょうか?
オプションでキャブレターが準備される。なんて本末転倒な話になる場合もある。
また、実際のレースシーンでは分離だけど燃料にオイルを混合!なんて馬鹿な話がまかり通ってしまう何てことが実際に想像できます。
すると、失ったパワーながら敏感な挙動を持つ一部のバイクなどはキャブの換装したりとハイパワー化するとただ危険なマシンと成ります。
と、なるとまたサスもオプション設定とメーカーだけには美味しい話です。

 

ま、時代の流れと言っても生粋のマシンと呼べるレーシング・マシンもあってよいでしょう。
人は多種多様なのです。
今や伝統あるGPマシンというか、純レーシングエンデューロはtmだけと言って良いくらい。
ただ、時代は確実に規制方向に移行していますからtmの様なマシンを選べる最後に近いチャンスなのは間違いないでしょう。

 

何時かはtmも同じく分離給油、インジェクションそしてセル装備のマシンとなります。
ただ、それは“真打は最後にやってくる”といえるマシンなのは約束できますが。

 

付録
排気ガス規制値はあくまで市街地走行時の排気ガスの絶対量になります。つまり、高速といった部分(全開時)等は規制されていません。
日本の場合ですが最高速50㎞の速度の中の市街地走行を想定したモード運転の中の話ですから実際の運転状況よりもさらに負荷は少ないという非現実的な状況です。
その中でのエンジンの要求する燃料、オイル供給量ですからレース走行したら簡単に壊れます。

また、公道走行用一般車両と完全に位置を明確にできますからレース走行における寿命などありません。故に時代の過渡期のならではのトラブルも発生するでしょう。
そのあたりを明確にご理解いただいて道具をお選びください。