画像はtmアルミフレーム用ステアリングヘッドのベアリング。
ご覧の様にtm racingと刻印されています。
この刻印こそtmのtmたる証明といいますか、高い剛性を誇るフレームとマシン自体の高性能の証の一つです。

ベアリングの製造メーカーは世界中に沢山ある。
そして通常バイクに使われるベアリングの大部分は大体のメーカーが生産している規格品。
と、言う事はそれぞれサイズ等が違っても同一メーカーで用意すればコストの軽減にもつながるはずです。
しかし、tmはエンジン内部だけでもイタリア、スェーデン等そして日本製とそれぞれ使用場所にてメーカーどころか原産国も変えて使用するというこだわりに満ちています。
例えばちょっと前の125のクランクシャフトは3ベアリングにて支持されていましたが左サイドNTN(日本)。右はSNR(スェーデン)のサイズ違いを並列に二個。
また、ミッションも同じくSNR&SKFそしてFAGのベアリングでそれぞれ構成(排気量にても違う)されていますがカウンターシャフトのドライブ側のベアリングだけSKFだったりしています。
しかも、何故か?その場所に使用されるSKFだけイタリア製という刻印がある。
つまり、同じ品番を持つ規格品でも使用場所によってメーカーは勿論、生産国を変えて採用されている。
当然、理由がある。
それはすべてtmの思うフィーリング&性能そして耐久性を維持する為です。
何度も述べていますが“多くのマシンは4~5レース後OHなどの手当てが必要。でもtmはそこから始まる”
これがtmの基準であり、始まりですからベアリングを吟味するなど当たり前の話。
だからボルト一本にもこだわっているのです。
余談
規格品はすべて同じという勘違い、間違い?
過去、年に一度以上必ずクランクサイドベアリングが破損する外国製エンデューロバイクがありました。
壊れるのは、壊す部分もあるからまだ良い。と、しても余りの頻繁さと部品代の高さに嫌気がさして“ベアリングは規格品”という意識(思い込み)から日本製の同じ規格番号を組み込んだ。何しろ値段は純正の30%以下です。しかもそのマシンは間違いなく壊れるので5台分購入!
しかし、組み込み、走行後わずか数時間で異音が発生!そのあまりの寿命の短さに驚いた。このままではケースまで壊してしまう。と、即純正に交換。
結果、安いと思って在庫までした残りのベアリングも破棄状態で大損!
余談
結果、純正品の方がはるかに長寿命で同じ規格番号でも品物の質が違う事を確認しただけでした。
そう、規格品だから皆同じとは言えない実例と、なった。
純正は社外よりは値段は高いが寿命も長い。しかし、長い寿命といっても例外なく早い段階で壊れますから本来ならリコールにあたるでしょう。
早い話、ベアリングの容量が最初から足りないという設計ミスでしょう。
結果、再度エンジン分解して純正ベアリングに交換という苦い思い出がある。
ただ“純正は高い”と、社外の安物を使って、最終的にはさらにお金と手間がかかったわけです。
つまり、高い授業料を支払うのは最終的に自分です。
だからエンジン内部ホィールの大事な部位のベアリングは必ず純正使用を推奨するのです。
そうです。エンジンや足回りという重要な部位に社外部品を使用するという事はtmがtmでなくなるとのです。
余談
昔、NGKのスパークプラグ(日本での売価¥1400のEGVプラグ)が日本までの運賃を払っても安いという事で数十本購入(アメリカより輸入)。
確かに見た目は寸部違わずにNGK。しかし、実際には数本に一本は火が飛ばない!
また、心なしか?随分とかぶりやすい!
結果、日本ではまさか新品プラグの火が飛ばない事などまずありえない。
つまり、火が飛ばない原因追及に時間はかかる。
つまり、安いからといっても購入に余分に輸送、送金手数料もかかる。
何しろ交換する手間もかかる!
後日談
十数年後、政府主催の貿易商談会に深圳(中国)に出かけた。
そこでホンダの純正部品が半額!と、いう触れ込みで商談申し込みがあり出かけると見た目はホンダ純正のパッケージの部品やら見た目はNGKやデンソーのプラグが並んでいた。
私だって同じ物なら“安い方が良い”。
本当に同じ物、同じ品質、性能であれば安い方が良いに決まっています。
でも、実際に輸入、色々試した結果上手く行った事などとても少ない。しかもまともな物はさらに少ない実体験から述べているのです。
さて先の画像のtmステアリングヘッドのベアリングですが、アルミフレーム用のベアリングとしてtmが特注した物ですが、その理由は?
tmは輸入車唯一のアルミフレームは強大な剛性を持っています。
その剛性を受け止め、応力のかかるステアリングヘッド部に使用するベアリングは非常に重要になる。
まして安全性にかかわる重要な部位です。
しかし、規格品の中、様々なメーカーを探してもtmの要求するベアリングが無い。
つまり、tmがベアリングメーカーにtm専用を特注する理由であり、同時に類がない程のアルミフレームの剛性の高さ、こだわりの証明でしょう。
余談
初めてtm社を訪れた二十数年前の事です。
一体、初めての訪問というか、挨拶には何をもっていけばよいのか?と、考えた結果、ケイヒンのPWM38をもっていくことにした。企業訪問に手ミアゲというのもおかしいが、とにかく持って行った。
して、そのキャブをマネージャーに手渡した後、20分はかかっていないと思いますがいきなり2Tの甲高い音が話をしているところまで届いた。
その音の先には先のPWMを装着して125によってベンチテストをしていました。
余談
しかし、仕事の手を止めさせていきなりテストですからね“好き物”の集まりです。
そのPWM装着125はPWKよりトルクカーブは別にしてもちょうど1PSパワーアップしている。
して翌年のMXモデルにはPWMが装備されました。
手前みそだが、もって行ってよかった。と、感じた出来事でもありました。
tmは確かに大きくはない。
でも、本当に情熱とこだわりを持ってマシンを開発しているというのがはっきり確認できた出来事でした。
その他tmの部品たち
tmはエンジンの構成部品としてベアリング、ピストン、電装品以外は自社にて生産しております。
クランクシャフト、エンジンケース、シリンダー、ヘッド等ですが、例えば2Tのシリンダー、4Tのヘッド(ポート)は一個一個職人の手によって仕上げ加工が施されます。
画像の様にその美しさはまさにハンドメイドならではの仕上がりです。
通常は、一般の方はご覧になる場合は少ないと思いますが見えないところも手を抜かない。パワーの為には手間暇を惜しまない。そう“tmはワークスマシン”と、例えられる理由の一つです。

それ以外のエンジン関係ではベアリングは先にも述べました。
2T用ピストンはイタリアのVERTEX。
4TピストンはアメリカのWISECO。
キャブレターは日本の京浜と三国。
しかし、カート用等はイタリア製キャブも使用。
4T用電子制御燃料噴射装置は自社のスロットルボディーとイタリア製コンピューターシステム。
点火装置、その他、ワイヤーハーネスコネクター、TMEES関係に使用されるコンデンサー類といった信頼性の必要な部位は当然の様に日本製。
サスペンションは今まで何度も紹介してきましたのでここでは割愛しますが、ここで車両とサスペンションの違いです。
例えばカタログと弊社のデリバリーするバイクの細部は違います。
日本がtmに依頼している車両は最も高性能というかコストのかかった仕様です。
例えば過去のオーリンスですが、フォークだけでも大きくは4種ありました。
その中で最も高性能、高品質、高コストのユニットを選んで輸入しています。
ですから数に限りがあり単純にコストも他国仕様とは違ってきます。
しかし、KYBフォークのシールは?
多分、国産車と同じ部品でしょう。ましてオイルシールというなら日本製が世界1でしょう。
そうNGKプラグ同様に国内で入手した方が安い、早い。
そこまでtm純正を使用する事もないのも世間の当たり前。
しかし、弊社はtm社にて成り立っておりますから弊社で使用するシールはtm社より購入するのも当然です。
余談
もしかしたら微妙に違うかもしれない。何より探すのが面倒です。
外装部品。
現在もRショックプロテクター等、日本製バイクの部品を使用している部位があります。
ですから日本製が安いと思われている。でも実際は大きな違いはありません。なぜか?tmを知らない方々の部品が高いというデモに惑わせられています。
それどころかtm純正の方がお安い場合もあります。
何より、tmから見たら社外品。
以上、マシンを維持するにお安いに越したことはありませんが、他は如何であれtmに限っては大事な部分は純正部品を推奨する理由です。