tmのエンジン(4T)

ツインカム、4ヴァルブ、ツインローターオイルポンプ+ドライサンプ潤滑というレーシングエンジンの教科書とも言えるレイアウトがtm4Tエンジン。

 

まずは歴史というか成り立ちから。

車体に搭載されたのは2001年モデルですが99年から採用された楕円パイプによる“ツインチューブ”方式のフレームは将来4Tエンジン搭載を考慮されてされていたと思われます。

 

当時SOHCが多かった中、tmは何故DOHCにこだわったか?
それは単純に“パワー”と“高回転”。
つまり、限られた排気量の中で出力を上げるには高回転まで回すのが当たり前。

そしてDOHCがSOHCより高回転に有利なのもまた世の常識。

 

では何故他機種はDOHCにしないのか?(当時)
部品点数増加に伴い重量(ヘッド部分)が増え重心が高くなる。また、同じ理由にてコストも上がります。


 オフロードマシンのエンジンをDOHC化するメリットがコスト、性能的に認められない。の、が当時の他社には大きな理由だった。また、技術的な難しさというジレンマもありました。

 

tmの場合は最初からSOHCなど眼中にありませんでした。
それは2Tでは世界の最新、最高峰なのは自他ともに認識していても4Tに関しては後発であることは間違いないからです。

故に全く新しく開発するならtmらしい最高峰を目指すのは当然です。と、いうかエンジン屋としてのプライドも許さないのでしょう。
ですから、最初からコストなど考えずにDOHC化。

 

してDOHC化に伴うヘッド部の重量増加&高い重心対策に最大の能力を注入。

 

ヘッド部で最も重量があるのは“カムシャフト”。
その重量物のカムシャフトがSOHCからDOHCでは単純に数が倍になります。

つまり、カムシャフトも倍、カムギャーも倍。してそれに伴う駆動チェーンが長くなる等、増加するヘッド部の重量は操縦安定性の要である重心位置に大きな障害になります。


で、tm社はカムシャフトを“中空”に、また、カムギャーも画像のように肉抜き軽量化。
また、ヘッド自体の製造方式も冷間鍛造という手法から高い剛性と軽量化を図りました。


さらに4T はエンジンの全高も高くなります。そこでtmはtmならではのドライサンプ方式を採用。


それは従来のドライサンプではフレームをオイルタンクとする手法が多く見受けられましたがそれは重心も高く、加えてマス集中からも外れてしまいます。

 

そこでtmはオイルタンクをエンジン最下部とし吸い上げと吐出をそれぞれ専用のオイルポンプ設定。
加えてエンジン搭載位置を下げる様にオイルタンクをアンダーフレームの間に収まるデザインを取りました。また、フィルター類、オイルポンプもすべてエンジン下部に集中。

 

結果、増強したエンジンに対応したキャブレター。
2000年くらいから始まった4T化に伴い各社は日本の京浜FCRを採用してきましたが、tmはエンデューロには同じ日本製ながら三国TDMRというFCRと同タイプの加速ポンプ付きキャブレターとしました。(MXは同じくFCRのダウンドラフト版であるFCRD)

 

何故三国TDMRとしたのか?
加速ポンプ作動タイミングの違い。また、高速域での効率の高さ、始動性のよさです。


基本TDMRはスロットル開度50%以上で加速ポンプが作動開始します。

FCRDは全域でポンプが作動という違いがありますが、市街地走行もあるエンデューロには加速ポンプ作動による排気ガスの関係もあるでしょう。


また、FCRDは低速から全域にわたって豊かなトルクを発生しますがTDMRの方がより高速でのパワー感があり、始動性も自然で良好。何よりどこまでも回る感覚というか突き抜ける様な感覚はTDMRがよりtmにマッチしていたような気がします。

 

さて01から始まったtm最初の4T250は02にて400もラインアップされました。
その最初の250はチューニングレベルが高く、また、TDMRという慣れないキャブの為もあって当初セッテングは難しく感じましたが基本そのレスポンスは従来の4Tの物とは全く別物で“鋭くもしなやかなレスポンスと回転上昇”を見せました。また、難しく感じたセッテングも慣れると非常に簡単であり、何より一度決まるとその後は実にイージーであり、エンデューロマシン用のキャブと言わんばかりの安定感を見せてくれました。


そうスロットルワークより先に反応するようなハイレスポンスに“そうか、これが本当のレーシングエンジンと、言うのか!”を、教えられた。と、言っても過言ではありません。

 

して400ですが、これがまた実に素晴らしくて今、もし入手できるなら欲しいと思っている程小気味よいマシンの筆頭。
実際tm400は知らざれる名機でした。
と、言うのも当時パイオリUSD46+オーリンス+tm製ツインチューブフレームの車体が素晴らしすぎで明らかに02までの250ではパワーが足りないのです。


しかし、400では十分なパワーにて存分に振り回すことが可能となり、そのRIDING FUNは今尚鮮明に思い浮かびます。
と、言いますか400のバランスが素晴らしかった。

 

実際、雑誌テストでは“果たしてこのマシンの価値を理解できるか?これほど高度なマシンを販売してはいけないよ”と、雑誌テスターに言われるほどの評価を得たのです。


言い方を変えるなら初めて制作したマシンがいきなり“名機”の称号を与えられたのです。

 

さて250に戻ります。
しかし、02までの4T250はさすがにtmにとっても物足りなかったのでしょう。
2003モデルにて早くも大幅マイナーチェンジとしてキャブレターの大型化、エレクトリックスターターが装備、加えてボアストロークも大きく変更されました。


これに伴い各部の材質も見直されピストンはイタリア製からアメリカのワイセコに。

クランクもイタリア製から日本製となりましたがtmの要求水準に足りずに現在はtmオリジナルとなりました。

 

以後、250は各部熟成を重ね、現在はフィンガーフォローとtmがいうロッカーアームがヴァルブを駆動する現在風のヘッドデザインと電子制御燃料噴射装置によってtm4ストローク第3世代エンジンとなってきました。

* tmの電子制御燃料噴射装置の要であるスロットルボディーはtmオリジナル(しかも自社生産)で 

  す。また、電子装置、マップセッテング等コンピューターもイタリアのミクロテック専用品。

  また、ディーラー向けのテスターは通常のマッピングや故障診断に加えてマッピングを作り変える

  ことも可能な逸品です。


2010年から発売されたFIエンジンは毎年熟成、セッテング等を重ねておりますが15モデルにて完成といっても過言でもない程の完成度、信頼性、パワーを実現しました。


結果、世界選手権においてtm250Fiがシリーズチャンプに輝いた事は記憶に新しいと、思います。


その発展版である16モデルはさらにリファインされ車体のコンパクト化、KYB専用フレームといえるファインチューンによって高度な操縦安定性の実現を見ました。驚くなかれ不満が全くないマシンと言えます。

以上により、tmが如何に250エンジンに開発コストをかけているか証明されます。 

 

400は2004より450となり、また530エンジンも発売されました。
250同様に熟成を重ねており排気量の余裕から大きなデザイン変更はありませんが電子制御燃料噴射装置を備えて現在に至ります。
 tm450の評価も世界的には非常に高いのですが、残念ながら日本には排気ガス対策、検査によるコストアップと販売台数とのバランスが見込めず現時点では販売を見合わせております。

 

 

余談
16tm250FIのインプレは本ホームページに記載しておりますが、今月、改めてゆっくり16tm250FIに乗って感じた部分をお知らせします。


それはエンジンの粘り。
マップ1(高速側)で全く不満が無い。それどころか回転を落としすぎた。シフトセレクトを間違えたなんて場合の驚異的な粘りは排気量が信じられない程のトルク感、粘りを実現しています。
しかもファイナルを標準の13T:52Tから13T:48とロング化。故に尚低速での力感に驚くのです。


後に装備した簡易型の回転計の数値から逆算すると13T:48Tで最高速は150㎞に届きそうです。国内のラリーには参加、優勝できる唯一の4T250と言って過言ではありません。

現実に先の16年湯布院ラリーにおいてtm250FIが総合優勝(ノーマルタンク、ファイナル13:49T)

 

しかも反面、回転上昇、つながり、パワー感、ピックアップが実に頼もしく、自然なのもありがたい。
15モデルより増強された低速トルクは明確であり、マップ切り替えのそれぞれの有効性も感じましたが16モデルではマップ2の必要性を感じない程です。改めて言いますがエンジンに関しては全く不満を感じない。
勿論、250ですから450に匹敵するとは言いませんが、今までの4T250の範疇を超えているのは間違いないでしょう。

 

さらに燃費です。
新車のシェイクダウン故に全開走行はしておりませんが、かなりのペースで100%ダートを走行してリッター16㎞走行というのにも驚きました。
車載メーターにての満タン法ですがフルタンクでは150㎞程走れる計算になります。
ファイナルを45T程度にすればさらに伸びるでしょう。


余談
そういえば以前、都内使用主体という事でRスプロケット42T+トレールタイヤとした250FIの走行テストにてダート走行してみましたがトラクション不足も感じず普通に走れる。と、言いますか愉しめた記憶がよみがえってきました。