tmのエンジン(2T)

さてtmを語る上で外せない最も大事なエンジンのお話に入ります。して、その最初はやはりtmというなら2ストローク。
2ストローク小排気量エンジンの世界でtmエンジンは世界の最高峰であることはその実績、実力から間違いのない事実として世界的に広く、また多くのモータースポーツファンの方が認識されております。

また、日本を除く世界ではtmカートエンジンはレーシングカートの世界では本物中の本物として、また最強レーシングカート用2Tレーシングエンジンとして発展、君臨しています。


それをご存知のない方でもtmエンジンの際限なく回る高回転を体験して“やっぱり、他とは違う”と、感じられた方もおいでになるかもしれません。

 

して、皆さんはカートエンジンの特徴をご存知でしょうか?
現在は125㏄のミッション付きが増えてきておりますが、カートは元来100㏄エンジンのクランクから直接チェーンでリヤシャフト駆動されておりました。

故に“0~20000rpm”と、いうワイドレンジにての性能、パワーは必然です。

 

また、その構造からお分かりでしょうがカートは“押がけ”にて始動。

して始動と共に飛び乗って走り出す。

結果、そのパワー共に“始動性+安定性”も大事な性能となります。
と、言いますかパワーと信頼性がカートレーシングエンジンの根幹となる。


余談 
現在はクラッチ、スターター装備もあります。

そんなカートエンジンの世界でtmエンジンといえば超一級品であり、“勝ちたければtmに乗れ”がパドックの合言葉となるほどですから一体どれほどのパフォーマンスなのか想像がつくでしょう。


 現在のハイパフォーマンスカートエンジンは125と移行。
その中、125のtmカートエンジンは一説には50psを超える。と、いう噂があります。
ちなみに現在のtm最高峰のカートエンジンはUS$8700にて売られている。

ただ、残念ながら日本では中々目にする事はない。と、いうか入手できません。

 

tmエンジンが如何に他のメーカーに脅威だったか?その一つを紹介します。
例えばミッションカート初期。
他社はモトクロスバイクエンジンをモデファイでしたがtmエンジンはそれ専用で新設計された物でした。

しかし、その次元違いの速さから、なんとあるメーカーが業界に対し政治力にてtmの優位性に業を煮やしルール改正を要請。

 

それは水冷エンジンですからエンジンからラジエターに冷却水を循環させるウォーターポンプ(以下WP)が必要です。
tmはリヤシャフトからプーリー+ベルトにてWPを駆動し冷却水を循環する方式を採用。

 

余談

 tm以外にも輸入エンジンはWP外付があったと思う。

当初はそれで問題なかったのですがtmしか勝てない状態が継続します。と、いうか他のエンジンが勝てない。
そこで、それまでのローリングスタートから“止まっている状態からスタート”とルールを改正。
つまり、冷却水が循環していない状態からのスタートですからtmエンジンは水温が上がりすぎた状態(オーバーヒート状態)で、最もパワーがほしいスタート時にパワーが無い状態でスタートさせられたのです。


* 他はモトクロス用ですからエンジン本体にWPを組み込み。

ご存知のように内燃機関に対して全負荷をかけるのは適正な機関運転温度が不可欠です。

しかし、本来のレーシング速度にて適正水温に合わせたWP回転速度がゼロなのですから機関温度は上昇しパワーを失います。

その状態でスタートさせる。と、言うとんでもないルールでした。
あまりのチープ&卑劣で強引なルール改正等と日本は先進国でありながらモータースポーツの世界では驚くほどの後進国ぶりを世界に見せつけたのです。


余談
日本は車、バイク、電気製品で世界に名だたる国に成長してきました。

しかし、その車、バイクを使うモータースポーツに関係する環境は嘆かわしい限りです。

 

ですから日本ではtmカートエンジンは知る人ぞ知るパワーユニットとして有名ですが、現在もあまり広まることはありません。

しかし、tmの高性能、本物のレーシングエンジンを愛する方々に支持され少ないながらも使用されています。ただその後tmはその規制に合わせクロスカートエンジンを日本でも発売しました。


* クロスカートエンジンとはtmのモトクロスマシンのエンジンをカート用にモデファイしたエンジ  ン。
* その当時最強tmカートエンジンK9はカーグラフィック誌に以前取り上げられました。

日本の最高峰車雑誌がその高性能、高名を理解していた程です。

 

ご注意
上記の話は日本のカート業界に弊社が参入しようとして色々調べたところ日本では輸入エンジンは難しいよ。と、様々なところで否定的な話を聴かされた中の話の一つ。

しかし、話の入手先も現在ありませんので実際の話なのか?また、この話が正しいのか?は、今となっては判りません。

また、十数年前の話ですので詳細は覚えておらず単なるうわさ話としてご理解ください。

 

さて、tm社を初めて訪ねた時に当時のマネージャーである故ファビオ・ウルビナッティー氏が言った言葉が今も鮮明に思い出されます。
それは、“他は4~5レース使用したらオーバーホールもしくは交換だ。でもtmはまさにそこから始まるんだよ”と、言う言葉でした。

 

実際、tmエンジンというか、tmを知るまでは“イタリア製=壊れる”と、言うイメージがありました。
それは、それまで扱っていたヨーロッパのバイクは本当によく壊れた影響からです。
そのバイクはお約束のように年に一度はクランクサイドベアリング交換、数年で高価な発電機が機能を失う。また、カブルもしくは焼き付くか等々と、乗っては素晴らしく良いバイクでしたが事“壊れる”という部分では最悪でした。


それもあって“tmはイタリア物だからさらに壊れる”と、思っていましたが、全く杞憂だったのはうれしい誤算でした。
壊れる確率というか、量でいうなら大袈裟ではなくそれまでのマシンの10%未満と言えます。

 

それとパワーです。
シャープでありながら、しっとりとも感じる肌触りというか、滑らかな回転質感、加えてどこまでもパワーを伴って回り込む感覚はまさに驚愕の世界。これがカートエンジンか!と、思う程です。していくら回しても壊れる様な感覚が全くない!


加えて乗り味は軽快でありながらも安定している。
そう“今までのエンジンは、マシンは一体何だった?”と、しみじみ世界は広い!と、感じた物です。

 

最後に音です。
tmの排気音というか?そのサウンドの素晴らしさは外せません。しかもその快音は排気量の関係なくそれぞれの排気量で魅惑の快音を聞かせてくれるのです。
それは、好き物の魂を揺さぶる快音。


始動と同時に迫力と力強さを覚える低速は“野太く”、高回転域ではジェット機を思わせる澄み切った金属音とのコンチェルトはまさに絶品中の絶品!


このtmミュージックとも例えられる快音はまったくtm以外の2Tエンジンとは異質。
貴方がピット要員ならtmが戻ってきたらすぐにわかるほど素晴らしい音です。

画像をご覧ください。

144のピストンです。左が14までのピストン。して、右が15から採用されているピストンです。単純にテフロンコートしているだけではなく、画像では判りませんが細部、例えばピストンリング、溝もシール性能が高い形状の新タイプ。


144は13モデルからTMEESが採用。14にてTMEESをモデファイ、15にて新シリンダー、ピストン、サイレンサーを変更モデファイ、して16はさらに新シリンダーポーテイングと変更。

 

以上のように144に限らず全てのtmのエンジンは毎年モデファイというか進化します。


 あたかもレーシングエンジンの宿命を実践しているようです。


* 人間の世界(肉体)もそうでしょう。進化共に記録は毎年塗り替えられる。

何より、tmの本当にすごいな!と、感嘆させられるのは新型に乗ると間違いなく進化を体感できながら旧型、年式の古くなったマシンに乗ってもtmならではの魅力、色あせないパフォーマンスを感じるという点です。


しかも決して古臭く感じさせない。

それどころかtmの血統を脈々と感じさせてくれる。


これこそ本物だけが持ちうる世界でtmがその年その年最高峰の技術、クオリティー、パーツで制作している証明になっていると思います。

 tmの最も素晴らしい価値だと思います。